ドラムのフィルが走ってしまう原因と解決法
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ドラムのフィルが走ってしまう原因と解決法

ドラムを叩く人なら誰もが経験する悩みの一つが、“フィルインでリズムが走ってしまう”ことです。

普段の8ビートや16ビートは安定して叩けているのに、いざフィルインに入った瞬間、テンポが速くなってしまう。これは演奏全体のクオリティを大きく下げてしまう問題ですよね。

この現象には、主に二つの明確な原因があり、技術的な側面と精神的な側面、両方に原因があります。

今回はフィルインが走ってしまう主な原因と、その具体的な解決法を詳しく解説します。

STEP:1 原因1. 一つ一つのリズムとテンポが掴みきれていない

多くのフィルインは、単なる4分音符の連打ではなく、8分音符や16分音符といった、より細かい音符を組み合わせて構成されています。

このとき、“なんとなくのリズム感”で叩いてしまっていると、テンポが安定しません。特に速いフレーズや、普段叩き慣れていない複雑な手順でのフィルインでは、フレーズ全体を1つの大きな塊として捉えてしまいがちです。

譜例のようなフィルインが出た場合に多くの初級者の方が思うことは
・16分音符は速く叩く
・手順が難しそう
・最後にタムが混ざってくる
など‥

楽譜自体の情報量も多く、一つ一つのリズムやテンポの注意が疎かになってしまい“なんとなくのリズム”になってしまいがちです。

原因1. 一つ一つのリズムとテンポが掴みきれていない

STEP:2 原因2. 気持ちに焦りがでる

ドラムのフィルインは、曲の中で最も目立つ瞬間の一つです。
ブレイクの直前だったり、曲の展開を盛り上げたりする、いわば「聴かせどころ」です。そのため、演奏者は「ここで決めなくては」という強い意識を持ちがちになります。

このプレッシャーや期待感が、「失敗してはいけない」「かっこよくキメたい」という焦りに変わり、精神的なゆとりを奪います。
焦りの感情は、物理的な動きに直結します。

• 無意識のうちに力が入る: リズムを正確に刻むための繊細なコントロールが失われ、打楽器であるドラムをより強く、速く叩こうとする力が働きます。

• 脳がフリーズする: 「次に何を叩くか」という思考よりも「失敗しそうだ」という感情が優位になり、本来のリズムに対する集中力が途切れます。

この「焦り」こそが、体感的なテンポを狂わせ、実際のリズムを前のめりにしてしまう大きな精神的な原因なのです。

STEP:3 解決1. メトロノームを使用して1拍ずつリズムの幅を確認する

技術的なブレを解消する最も確実な方法は、メトロノームを徹底的に活用することです。しかし、単にメトロノームに合わせて叩くだけでは不十分です。

1. 超スローテンポで設定する: 普段の演奏テンポの半分、あるいはそれ以下(例:BPM 60〜80程度)にメトロノームを設定します。

2. 1拍ずつ区切って確認する: 4拍子のフィルインであれば、最初の1拍目だけ、2拍目だけと細分化し、それぞれのリズムの“幅”を確認します。この時に重要なのは耳を使って音をよく聞くことと、手の動きや速さがどの程度なのかをしっかり体感しておくことです。

3. それぞれの音符を繋げていく: 細分化したリズムを繋ぎあわせていきます。一気に4拍繋げても時間が掛かるので、ここも焦らず1拍ずつ増やしていきましょう。
リズムからリズムに移行する時に、細分化して練習した時の音や感覚になっているかを意識しましょう。

この練習を繰り返すことで、音符一つひとつに持つべき正確な間を捉えられるようになり、正確かつ大きなフレーズとなっていきます。

STEP:4 解決2.フィルインに対して焦る気持ちを「作る」訓練をする

「焦るな」と言われても、本番で焦りは必ず生まれます。それならば、「焦る」状態をあらかじめ練習に取り入れてしまうのが、最も現実的な解決法です。

実行ステップ
1. あえて焦りを意識する環境を作る: いつも使っている練習フレーズを、「今すぐキメないと失敗する」というプレッシャーを自分にかけるような状況で練習します。
• 例:「フィルインだけ3回連続で完璧にできなければ、もう一度最初からやり直す」というルールを設ける。
・例:「前の小節から3回連続で出来ないともう一度最初からやり直す」など。

2. 「失敗してもいい」と許可を出す: 焦りの原因は「失敗への恐怖」です。練習中はあえて「多少走っても、とにかく次の小節のアタマに戻る」という意識を持つことで、精神的な負荷を下げます。

3. 呼吸を整える動作を取り入れる: フィルインの直前、4拍目のハイハットを叩く瞬間に、「軽く息を吐く」などのルーティン動作を組み込みます。これにより、身体の緊張を意図的に緩め、焦りによる無意識の力みを防ぎます。

「焦る」練習をすることで、本番で焦りが生じた際も、「ああ、いつもの練習で感じた焦りだ」と冷静に受け止めることができ、その焦りに飲まれずに演奏を続ける「心の耐性」が生まれるのです。

STEP:5 まとめ

ドラムのフィルインが走ってしまう現象は、ドラマーにとって永遠の課題のように感じられるかもしれません。しかし、その原因は「一つ一つのリズムとテンポが掴みきれていない」という技術的な問題と、「気持ちに焦りが出る」という精神的な問題の二つに集約されることがほとんどです。
技術的な問題は、メトロノームを使った超スローテンポでの1拍ごとの分解練習で、正確な時間軸を体に叩き込むことで解決します。そして、精神的な問題は、練習中にあえて「焦る」状況を作り出し、そのプレッシャーに慣れてしまうことで克服できます。

フィルインを成功させるカギは、テクニックやスピードではなく、いかに正確に「時間」をコントロールできるか、そしていかに「冷静さ」を保てるか、という点にあります。

これらの解決法を取り入れ、あなたのドラミングを次のレベルへと引き上げましょう。安定した、聴かせられるフィルインは、あなたの演奏を劇的に魅力的にしてくれるはずです。
あなたのドラムがより安定し、ライブやセッションがもっと楽しくなることを願っています!

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