トロンボーンを始めよう!
管楽器 トロンボーン
入門
クラシック

トロンボーンを始めよう!

【はじめに】
トロンボーンは「金管楽器」と呼ばれる金属で出来た楽器の一つでスライドで音を変えて演奏する楽器です
※サックスも金属で出来ていますがサックスは「木管楽器」の一つです
人の声に一番近い音がする楽器とも言われ古くは教会で賛美歌と一緒に演奏されていました
今ではオーケストラや吹奏楽をはじめジャズ、ポップス等様々なジャンルで使用されています
オールマイティーな楽器かもしれませんね

【トロンボーンってどうやって音を変えている?】
トロンボーンの音程を変えるのはスライドを伸ばしたり縮めたりすることが基本になります
スライドのポジションは1から7まで7つのポジションがあります
一番手前が1ポジションで一番伸ばした状態が7ポジションとなります
スライドを伸ばせば音が低くなり、スライドを縮めると音が高くなります
1ポジションの上下で半音音程が変わります
1つ分ポジションを下げれば半音下がり、逆に1ポジション分上げると半音高くなります
また、トロンボーンは同じポジションでも違う高さの音を出すことができます
これを音楽用語では「自然倍音」と呼ばれています
1番高い音が出るのが1番ポジションなので1番ポジションで音の高さを変えたところからスライドを伸ばすことによって音程を作っていきます
この組み合わせで様々な音程を出すことができるようになっています
学校等でピアニカやリコーダーは吹いたことがあるかと思います
中にはピアノや木琴なども音を出したことがある方もいると思います
これらの楽器は決まった鍵盤や決まった指使いで決まった音が出せますよね
トロンボーンの大きな特徴であるスライドは、この「決まった音」を出すことはもちろん、その音の間の音も出すことができる唯一の楽器です
これがトロンボーンを演奏する上で難しくもあり、楽しさのひとつとも言えるでしょう

【トロンボーンの種類】
一言にトロンボーンと言っても様々な種類があります
一般的によく見かけるトロンボーンは「テナートロンボーン」「テナーバストロンボーン」「バストロンボーン」です
オーケストラ等では「アルトトロンボーン」と呼ばれるテナートロンボーンより小さいものや「コントラバストロンボーン」と呼ばれるバストロンボーンより大きな楽器もあります
「ピッコロトロンボーン」「ソプラノトロンボーン」と呼ばれるトロンボーンもありますがあまり知られてはいません
また「サックバット」と呼ばれる昔のトロンボーンや「ビュッサン」と呼ばれるベルの部分がヘビの形をしたユニークな楽器「チンバッソ」と呼ばれるトロンボーンとチューバを足したような楽器もあります

【トロンボーンの構造】
トロンボーンは主に3つのパーツから構成されている楽器です
「マウスピース」「ベル部分」「スライド」

・マウスピース
口直接触れるパーツです
主にテナートロンボーンには「細管用、スモールシャンク」と呼ばれるものがあり、テナーバストロンボーンやバストロンボーンには「太管用、ラージシャンク」と呼ばれる、大きく分けて2種類のサイズがあります
主に真鍮で作られていてそれに銀メッキがされていて丸みを帯びた形をしているのが一般的です
リムと呼ばれる口に当たる部分は外径や内径の他に幅や暑さ、フラットなものや角度がついているものなど様々な仕様のものがあります
カップと呼ばれる深さを決める部分も様々な仕様があり、内部はUカップと呼ばれるものやVカップと呼ばれるものだけでなく周りの形状も丸みを帯びたものから円筒に近いものや円錐に近いものなどの様々な形状があります
スロートやシャンクと言ったトロンボーン本体に差し込む部分にも様々な仕様があり息の入り口の大きさが違うもの、息が入って楽器に息を送り込むところまでの角度や広さ、外径と内径の厚さやスロートの長さや太さにも違いがあります
さらに本体は真鍮で作られたものが一般的ですが他の金属を配合したものや「木製」「プラスチック」等の金属以外の素材のものもあります
メッキの種類も銀メッキをはじめ「金メッキ」や「ピンクゴールドメッキ」「プラチナメッキ」等様々なメッキの種類も存在し、銀メッキをベースにリムだけに他のメッキをかけたり、カップの中に他のメッキをかけたり…
とこのように口辺りの良さを決める部分でもあり、息の入れやすさ、音の高さや音程のコントロール、音色もその仕様によって変化するトロンボーンにとって1番大事なパートと言っても過言ではないでしょう
そのために、長年演奏をしているとマウスピースだけで数十本…という所謂「マウスピース沼」に嵌ってしまいます
まずは楽器屋さんで標準的なマウスピースを試奏させてもらい吹きやすいものから始めるとよいと思います

・ベル部分
ベル部分は出した音を増幅マウスピースで作られた音の響きを整えたり、材質によって音色に大きな変化を与える部分です
主に「イエローブラス」「ゴールドブラス」「レッドブラス」と呼ばれる種類があり本体の銅が含まれる比率によって分けられています
イエローブラス→レッドブラスの順に銅の比率が高くなっています
音色はイエローブラスが明るくはっきりした音のようなイメージに対してレッドブラスに近づくと暗めで柔らかな落ち着いた音というイメージです
銅のままですと錆びてしまうので、主に「クリアラッカー」と呼ばれる処理がされています
※ノーラッカー(アンラッカー)と呼ばれるラッカーをかけないものもありますが日本では気候的は変化も受けやすいためあまり見かけません
ラッカーに関しては次に述べるスライドも同様です
ベルにもメッキをかけることができるので「銀メッキ」のものや「金メッキ」のものもあります
また、ベル全体が銀で作られた「スターリングシルバー」と呼ばれるものもあります
それぞれメッキの種類によっても音色の違いや吹奏感に違いがあります

・スライド
スライドは前述した通り音の高さを調整する部分です
内管と外管に分かれていて外管の支柱を持ってスライドを操作します
内管の先端にはストッキングと呼ばれる少し太くなっている部分があり、ここにクリームやオイルを塗りウォータースプレーで水を吹き付け滑りを調節します
内管はニッケルで出来ているものがほとんどで外管は真鍮製のものにラッカーをかけたものが多く、ニッケルで出来たライトウェイトスライドというものもあります
また、2本の管の太さが違うデュアルボアと呼ばれるスライドもあります
先端には石付と呼ばれる楽器を下したときに、直接床などにスライドがぶつからない様に主にゴム製のパーツが取り付けれれています
スライドもその材質やラッカーの種類、太さなどで音色や吹奏感に違いがあります

どのパーツ部分にも言えることですが金属で出来ているため「ぶつける」「落とす」などで凹みができたり、表面の手入れを怠るとラッカーが剥がれ錆びが出たり、長年使用していると金属疲労を起こし少なからず音色に影響が出てくるので「丁寧に扱う」こと、演奏後の「お手入れ」は毎回するようにしましょう
また信頼できる楽器屋さんで定期的に見てもらい必要に応じてメンテナンスをしてもらうことをお勧めします

【楽器の構え方と姿勢】
左手で楽器の重心を支え、右手が常にフリーに動かせるようにします
特に左手で支えることができずに右手に重量の負担があるとスライドが変形する原因にもなります
基本的に練習するときは背筋を伸ばして立った時の上半身の状態を保つようにし、座って演奏する場合も上半身は立って演奏しているときの姿勢で演奏しましょう
楽器の重量を支えるために左手で強く握りしめてしまうと響きを止めてしまう原因にもなりますので掌だけではなく腕の筋力を中心に支えるようにしましょう
スライドは右手の親指、人差し指、中指の三本の指で支柱を持ちます
手の甲が上に向くようにし水平にスライドを滑らせるように操作し、なるべく手首の返しを使わないようにします
トロンボーンは左手で楽器を支える楽器の中では重い楽器の部類になります
このため楽器を左手だけで保持するための筋力、スライドを伸ばすことによる重心の変化に対応できる背筋の力と柔軟性が必要です
普段から姿勢よく歩くことを心がけるとよいかもしれません

ここでは主に初心者の方でも分かりやすいように一番よく見かけるテナーバストロンボーンを使って音を出すところから基本的な練習方法をはじめ様々な奏法を解説していきます

【トロンボーンを吹く前の練習】
・呼吸法
・バズィング
・マウスピースを使ったバズィング

【トロンボーンを使った主な基本的な練習】
・ロングトーン
・リップスラー
・タンギング(シングルタンギング/ダブルタンギング/トリプルタンギング)
・スケール

【トロンボーンで使われる主な演奏方法】
・グリッサンド
・ビブラート

【トロンボーンで使われる少しテクニックが必要な演奏方法】
・ベンド
・リップアタック
・リップトリル
・フラッター
・重音

【練習の最後に行うクールダウン】
・F管を使用した低音域の拡張とクールダウン

STEP:1 呼吸法・バズィング・マウスピースでの練習

【呼吸法】
呼吸法は息を使って演奏する管楽器全般においてとても重要な練習です
「腹式呼吸」という言葉を思い浮かべた方も多いかと思いますが、まずはいっぱい息を吸っていっぱい息を吐く練習をしてください
「深呼吸」をイメージするとよいかもしれません
口を大きく開き、歯の間をあけ、口腔内を広くして練習するためにゴムホースを10cmくらいに切ったものを歯で軽く噛むようにし呼吸の練習をすると自然と多くの息を吸い、吐くことができると思います
この方法で深い呼吸のイメージをつかむと良いと思います
この方法は有名なプロプレーヤーの方が実践している方法でもあり、本番前の時間の無い時にこの方法で呼吸を整えるそうです
また、吸う力を強めるために呼吸に関わる筋力を鍛える方法として専門の器具を使う方法もありますが、はじめは柔らかいペットボトルなどを使用してもよいかと思います
沢山息が吸えるようになったら「ブレスコントロール」の練習をしてください
はじめはゆっくり吸って同じスピードでゆっくり吐く
そこから吸うスピードを速くして吸ったスピードで吐く
様々な練習パターンがありますが動画ではメトロノームを使って基本のブレスコントロールを解説しています

【バズィング】
金管楽器の音の元は「唇」です
合わせた唇を振動させることによって生じる音がマウスピース、楽器を通じて増幅されて音になっています
バズィングのバズは蜂の羽音「Buzz」からきています
唇を振動させると確かに蜂の羽音のような音にも聞こえます
練習方法としては大きく息を吸い、唇を程よく閉じた状態で息を出し唇を震わすところから始めると良いと思います
その振動している部分を徐々に唇の周りの筋肉を調整しながら唇だけ震わす、唇の中心だけを震わすように練習していきます
この振動しているときの唇の空気が通る穴を「アパチュア」と呼び、唇を振動させている時の口周りを含めた口の形を「アンブッシュア」と呼びます
ある程度の音域で出来るようにした方が良いのですが習得するまでに時間がかかるので、時間のある時に少しでも練習を継続することをお勧めします
はじめから出来る方は少ないので、できない場合は無理をせずに次のマウスピースの練習が慣れたら再度練習に取り組んでも良いと思います

【マウスピースを使ったバズィング】
前述までの呼吸法やバズィングは体を使う練習ですが、ここからマウスピースを使う練習になります
基本的にはマウスピースをあてる位置は唇の中心とマウスピースの中心が合うようにするのが望ましいのですが「十人十色」と言われるように「唇の横幅」「唇の厚さ」「口角の方向」「歯並び」等によりその当て方の正解はその人によって異なります
簡単な唇の中心のを見つける方法は「ストロー」で飲み物を飲むときに一番飲みやすく唇で挟んでいる位置が唇の中心と考えるとわかりやすいかと思います
その中心から息を出したときにマウスピースのカップの中心の穴「スロート」に息がまっすぐに入る位置を探します
マウスピースをあてて息を出すときにマウスピースの先端に反対の手をかざし息を吹き込みます
この時に吹き込んだタイミングと手で感じたタイミングが一番近く感じる場所が唇の中心とマウスピースの中心が合っている場所になります
ただし、前述したとおりここでは唇とマウスピースの関係性を示しているため、歯並びや口角によっても息の入れやすさ、楽器で演奏するときのコントロールのしやすさにも影響があるため、あくまでも目安と思ってください
マウスピースで練習するときはなるべく慣れるまでは利き手の反対の手で持つようにします
親指、人差し指、中指の3本の指で「カップ」と「スロート」の間あたりをもちます
何故、利き手の反対の手で持つかというと利き手で持つと無意識にマウスピースを口に強く押し付けてしまうからです
これは楽器で練習するときもそうですが、マウスピースは基本的に金属で出来ているので口に強く押し当てると唇の血行が悪くなり唇の振動の妨げにつながります
振動が起こらないとさらに無理に音を出そうとさらに押し当て、これを繰り返すと唇が疲れやすくなる原因にもなります
疲れてくると高い音が出しづらくなり、更に押し当てて高い音を出そうとするため悪循環に陥ってしまいますので、なるべく普段からマウスピースを唇に押し付けない様に練習することをおすすめします
では実際に唇にマウスピースをあてて息を吹き込んでみてください
息のスピードはなるべくゆっくり、唇は軽く閉じた状態で吹き込んで自然に音がでるように調節をしていきます
息だけが出て音にならない場合は息のスピードを少し遅くしてみてください
また唇を閉じる力が強すぎることもありますので少し唇を合わせる力を緩めてみてください
唇を閉じる力加減と息のスピードが適度に合ったときに唇が振動しマウスピースから音がでるかと思います
音が出るようになってからはなるべくマウスピースの「響き」を意識してください
響きを意識と考えると難しく思えますが、まずは楽に息を出して大きな音がでるようにしてみて下さい
響きがでているとマウスピース自体の振動も大きくなるので持っている「指」に振動が伝わってきます
その状態がマウスピースの音が響いていると状態と考えるとわかりやすいかと思います
練習を続けていくとマウスピースだけで音を変えることもできるようになってきます
ピアノやチューナー等で音を出しながらマウスピースで同じ音が出せるように練習することをおすすめします
このマウスピースの練習は金管楽器を演奏する上でとても重要な練習です
マウスピースで出せない音は楽器でも音が出せないといわれています
今トロンボーンを吹いていて楽器では音は出せても特に「高音域」や「低音域」が上手く吹けない方はマウスピースで試してみて下さい、その音がマウスピースで出せないかと思います

STEP1から長くなりましたが、初めてトロンボーンを触る方はこの「呼吸」「唇の振動」「マウスピース」の練習の仕方を知っているかどうかでその後の練習効率に差が出てきます
また、今現在トロンボーンを吹いている方で何かにつまずいている場合、多くの場合は「呼吸」の改善と「マウスピース」の当て方やマウスピースでの「音色」「音程」のコントロールができるようになると大体の問題は解決できるかと思います

STEP:2 【ロングトーン】

ロングトーン(Long tone)を直訳すると「長い音」
トロンボーンに限らず管楽器を経験したことがある方は聞いたことがあり、吹奏楽部とかでは顧問の先生や先輩に「ロングトーンしなさい」と言われたことがあるかと思います
そして何故ロングトーンをするのか意味がわからないままメトロノームに合わせて8拍伸ばすという練習をしていたかと思います

ロングトーンはトロンボーンの基礎練習の中で最も重要な練習と言えます
元々トロンボーン自体が日本発祥の楽器ではないため、練習方法も日本語で正しく解釈されていないようです
ロングトーンは外国では「響き」をつくる練習とされています
または「音を置く」とも言われています
どんなに技巧的な演奏ができても元の音が良い音でなければいその技術的な演奏効果も半減してしまうでしょう
ロングトーンの基礎となるのは「良い音」のイメージを持つことです
生でソリストの演奏を沢山聞くのが一番良いのですがCDや動画などでも最初は良いと思います
色々なプレイヤーの演奏を聴いて自分の好きな音を見つけてみて下さい
そのイメージを持ちながらトロンボーンで音を伸ばしてイメージに近い音を作り上げていく練習がロングトーンです
はじめは出せる音で何拍とかは気にせずに良い音の響きを確認してみて下さい
ある程度自分の響きが出来てきたらその響きを他の音でも出せるようにしていきます
それから響きを保ったまま決めた長さを伸ばす練習に移行してきます
楽譜で表すとヘ音記号の上から2線目の「ファ」の音から始めるとよいと思います
この音域は高すぎず、低すぎない音でありその他の練習の基準にもなっていく音です
この音が楽に出せるようになったら楽器の練習の初めの音はこの「ファ」の音に固定してみると良いと思います
理由は大きくわけて2つ
1.毎回初めの音を固定することで前回の練習の時の音との比較ができるので、その日の自身のコンディションがわかりやすい
2.マウスピースや楽器を買うときに固定の音をはじめに吹くことで今までとの違いがわかりやすい
ロングトーンのステップアップ練習はダイナミクスの変化練習です
8拍間かけて音を大きく(クレッシェンド)する練習
8拍間かけて音を小さく(デクレッシェンド)する練習
4拍かけてクレッシェンドし4拍かけてデクレッシェンドする練習
クレッシェンドもデクレッシェンドも「響き」「音程」は一定に保ち、記号の形のように段階的に音量を変化させることに注意してください
特にデクレッシェンドの練習はクラシック音楽では「音の処理」の仕方として重要な練習になるので音が無くなって息だけが楽器に伝わるくらいまで音量を下げれるように練習することをおすすめします

STEP:3 【リップスラー】

トロンボーンは7つのポジションで音程を変えていきます
1つのポジションの中に「自然倍音」というもので音の高低を変え、その音からスライドを伸ばすと音が低くなり、縮めると音が高くなります
リップスラーはこの自然倍音間をアパチュアと息のスピードを調整して音を変える練習です
この練習はアパチュアを正確にコントロールするためのアンブシュアの筋肉を鍛える練習になるため、筋力が付くほどに音域が広がる練習になります
またメロディーを演奏するときにはこのリップスラーができる範囲を広げないと思ったようにメロディーが演奏できません
プロのプレイヤーの方でもロングトーンはしなくても、このリップスラーの練習には多くの時間を割く方もいるくらいです
始めはロングトーンで出せる範囲でゆっくり下の倍音に下げる練習からしてください
ここでも「ファ」の音から下の「シ♭」に下げる練習から始めると練習しやすいと思います
その音域で下がることが出来たら逆に下から上に上げる練習をしてください
どちらもできるようになったらメトロノームのテンポ60で2分音符、4分音符、8分音符で上下できるように練習してください
8分音符まで正確に音の切り替えができるようになったころにはその一つ上の倍音からのリップスラーができる筋力がついていると思いますので「ファ」の上の「シ♭」の間で、それが出来たら下の「シ♭」から「ファ」上の「シ♭」を上下できるように練習してください
出来るようになったら倍音を上げて同じように練習をし音域を広げていきます
焦らずに着実に正確に練習することがこの練習の成果を最大限に引き出せます

STEP:4 【タンギング】

タンギングは音を切る練習です
舌を動かして音を切るので(Tan-ging)と呼ばれます
トロンボーンではこのタンギング技術を習得するのは特に難しい基礎練習だと思います
まず、トロンボーンはスライドで音程を変えるため、どのようなメロディー等のフレーズでも必ずと言っていいほどタンギングが必要になります
特にスラーが掛かっているフレーズでは音の長さを保ち音を繋げ音を変えるため正確なスライド操作と適切な発音と音の長さが必要です
このため「ロングトーン」「リップスラー」である程度の音域をコントロール出来てから練習することをお勧めします
アンブッシュアが出来ていないと発音する際に唇が動いてしまい発音が遅れます
また、呼吸が安定していないと発音の際に息が入るタイミングが遅れるため発音のタイミングよりも音が遅くなります
上記の両方が重なる場合もあります
タンギングは舌を「突く」と思っている方がいますが、どちらかと言えば舌を「離す」練習です
音域にもよりますが発音する前の舌の位置は上の前歯あたりかその上の歯茎のあたりにあり、舌が降りることで息が流れ発音されるはずです
この感覚を身につけることがタンギング、発音の練習の重要なところになります
練習する際に遅いテンポで4分音符くらいから練習を始めるとアンブシュアが崩れやすく、息も止まってしまう要因にもまります
息をロングトーンのように伸ばした状態を維持しながら舌を動かすにはある程度細かい音符で練習する方が感覚がつかみやすいです
テンポ60で16部音符をなるべく音の長さを十分に保った「テヌート」で練習をはじめることをお勧めします
細かい音符を長さを十分に保って刻もうとするとアパチュアが閉じる時間が(ほぼ)ないためアンブッシュアが安定し、長さを保つために息を送り続けるため息が止まることも最小限になります
まずは1拍を16部音符で吹いて1拍は4部音符で吹いてみてください
16部音符の響き方と4分音符の響き方が同じになるように、特に16部音符の響きに注意しながら練習してみて下さい
できるようになったら3拍16部音符1拍4分音符で練習をし、音域を広げてください
リップスラーの項目の下の「シ♭」から1オクターブ上の「シ♭」を目安に
安定してこのテヌートのタンギングが出来たら、少しずつ16部音符の音の長さを短く、最終的には半分の長さでタンギングできるように練習してください、これが音を短く発音する「スタッカート」の発音になります
テヌートもスタッカートのタンギングも音の長さが違うだけで響きや音量に変化がないように注意してください
できるようになったら1小節ごとに4分音符→8分音符→3連符→16部音符で均一に音が鳴るように練習し、徐々にテンポ上げて練習してください
シングルタンギングは舌の長さに個人差があるため、幾ら練習してもある一定のテンポ以上より早くできなくなりますので、そのテンポの限界がわかったらそれ以上速いテンポの練習よりもダブルタンギングの練習に切り替えてください

・ダブルタンギングとトリプルタンギング
シングルタンギングが舌先を下げる発音で音をだすのに対してダブルタンギングは舌先と舌元での発音を繰り返すタンギングです
舌前の発音を大体教本等では「トゥ」または「T」と記載され、舌元での発音を「ク」または「K」と記載されています
練習方法としては「T]と「K」の発音が同じように発音できるように練習します
テンポ60で4分音符を「TTTT、KKKK」と吹いて「T」と「K」が同じように音が出るようにします
次に「TTKKTTKK」「TKTKTKTK」と進めていくとダブルタンギングになります
そしてトリプルタンギングは「TTK」または「TKT」の発音になるのでダブルタンギングの応用になります
ダブルタンギングとの大きな違いは「トリプル」といわれるように3連符が続くときに多く使われます
トリプルタンギングの注意点は「TTK」の場合でも「TKT」の場合でも連続した場合に「T」の発音が2つ続くためシングルタンギングで「T」の発音を連続で出来ないとトリプルタンギングでも発音ができないことです
ダブルタンギング、トリプルタンギングの形が出来たらシングルタンギングと同様に4分音符、8分音符、3連符、16分音符の順で、シングルタンギングで出来るテンポより20程度落としたテンポから練習をしてください
これはシングルタンギングの上限のテンポから練習を始めた場合シングルタンギングの限界のテンポとダブルタンギングのできるテンポが同じ場合、曲中でのテンポ変化に対応できないことや、シングルタンギングでもできるテンポでもダブルタンギングを使った方が発音が明瞭になる、曲想の変化がつけられたりするためです

STEP:5 【スケール】

基礎練習の中でも総合的な練習です
少し難しい話になりますが「音階」には「長調」と「短調」がありさらに「短調」には「自然短音階」「旋律短音階」「和声短音階」の3種類があります
そして各音階に12種類の音階「調性」があります
つまり最低でも「基本」の音階が48種類存在します
この他にも日本の伝統音楽にみられる「5音音階」や「全音音階」「ペンタトニックスケール」等があります
そしてもう少し難しい話になりますが音階には「平均律」と「純正律」というものがあります
簡単に説明すると「平均律」はピアノで弾いたときの音程(ピッチ)で「純正律」は平均律で演奏する音階の音程に高低の差があります
「平均律」はどの調で演奏しても均一に聞こえるのが利点の半面、完全なハーモニーが作れません
「純正律」はその名前の通り各音が平均律と比べてその調の音階が正確に演奏されるため完全なハーモニーが作れます
このため、音階はメロディーの基本的な構成要素であるとともに、トロンボーンで重要なハーモニーを作るためにも必要不可欠な練習になります

まずは「長調」の中から「シ♭」から始まる音階を1オクターブできるように練習します
テンポ60で全音符→2分音符→4分音符の順に、スライドを正確に操作し出すべき音を頭でイメージし発音して上に上がる音階、上から下がる音階を練習してください
できるようになったら8分音符、16分音符と音を短くしていきます
正確なスライド操作が必要になりますの焦らずにじっくり練習してください
音階練習の拡張方法としては
・音域を広げる→2オクターブまでできるようにする
・ほかの調の練習をする
・テヌートやスタッカート、スラー等の「アーティキレーション」を変える、それらを組み合わせる
・パターンを変える
・純正律の音程で練習する
本来であれば純正律で音階の練習をするのが好ましいのですが音程を聞き分ける耳の力が必要になってくるので上記の中からできるものから練習していくことをおすすめします

STEP:6 【特殊奏法 】

【グリッサンド】
グリッサンドはトロンボーンの一番の特徴であるスライドを動かしながら音を出す演奏方法です
出した音から息を出し続けながらスライドを伸ばす、または縮めるとグリッサンドがかかります

【ビブラート】
伸ばしてる音の音程を変化させて表現する方法です
歌を聞いてて音が伸びてるときに音程の揺れを聞いたことがあると思います
かけかたは演奏する曲などによって違いがありますが大きく分けて2つ
「スライド」を動かす方法と「唇」を動かす方法です
この2つの方法は練習次第で意図的にコントロールが可能です
スライドを使ったビブラートはスライドを動かしてかけるため視覚的にも分かりやすいのですが唇でかける方法はこの後の「リップトリル」で解説します

【ベンド】
唇だけで音程を変える奏法です
「強制倍音」や「ブラッドトーン」とも呼ばれます
始めに出した音から半音ほど唇で音程を下げて元の音程に戻すことにより、その音の音程や響きの「ツボ」を覚えることができる練習のひとつです
また、低音域になるとスライドとF管を使っても出せない音、通常の7番ポジションでF管レバーを引くとF管の6番ポジションになり「ド」の音がでますが、その半音下の「シ」の音がスライドが伸ばせないため出せません
そこでこの「ベンド」で「ド」の音を唇で「半音」下げて「シ」の音を出します

【リップアタック】
リップスラーの応用の練習です
スライドは基本的に伸ばすと音程が下がりますが、スライドを伸ばしながらリップスラーで音を上げるて音を変えることができます
逆にスライドを伸ばした状態である程度の高音域からスライドを縮めながらリップスラーで音を下げることもできます
スラーのフレーズを演奏する際に、音を上げるときにスライドを縮めると間の音(ポルタメント)が入ってしまったり、グリッサンドのようになる場合にこの奏法を使用することがあります
逆の場合も同じです

【リップトリル】
トロンボーンはスライド楽器のため基本的にトリルをかけることができません
そのためトリルはリップスラーをテンポ120以上で6連符の練習が必要になります
60のテンポで6連符の練習をして、できるようになったら少しづつテンポを上げて練習し120まで上げて練習します
また、トリルは大体1音上の音でかけるためスライド操作とリップスラーの両方の技術が必要になってきます
この練習も焦らずに徐々にテンポを上げて正確に出来るように練習してください
この練習で音を変えずに音程だけをベンドのように繰り返すと唇でかける「ビブラート」になります

【フラッター】
巻き舌をしながら音を出す奏法です
舌で「るるるるる…」と震わせながら音を出します
巻き舌が出来ない方は「喉」を震わせてかけるのですが喉に負担が大きいこととコントロールが難しいです
効果音的な使われ方でグリッサンドと併用されることが多いです

【重音】
トロンボーンで音を出しながら自らの声を重ねる奏法です
トロンボーンの無伴奏独奏曲、現代曲とよばれる近現代の曲で使用されます
トロンボーンで出している音にはその音をイメージので、更に声でどの音を出すのかイメージが出来ないとできない奏法のためトロンボーンだけでなく「ソルフェージュ」や「聴音」といった練習が出来ていないと思い通りに演奏は難しい奏法です
楽団などで演奏している限りではこの奏法がつかわれることは滅多にないと思いますので参考までに

STEP:7 【F管を使用した低音域の拡張とクールダウン】

練習後に緊張した唇をほぐしつつ、低音域の拡張をする練習方法です
1番ポジションで下の「シ♭」の音を出しながらレバーを引くと「ド」が出ます
レバーを戻すと「シ♭」になります
レバーを引き音を下げると「ファ」の音がでます(下のシ♭から6番ポジションに伸ばすと出る音)
レバーを戻し「シ♭」の音を出したらポジションを下げていきます

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