「最後のサビになると、急に盛り上がったように感じる」
曲を聞いていてそう思ったことありませんか?
その変化には、「転調」という音楽の仕組みが関係しているかもしれません。
転調と聞くと、楽譜やコードの知識が必要な難しい音楽理論に思えるかもしれません。しかし、まず「キーとは何か」を理解すると、転調の仕組みもぐっと分かりやすくなります。
この記事では、音楽初心者の方に向けて、キーの基本から転調の仕組み、代表的なパターンまで分かりやすく解説します。
実際の演奏も聴きながら、「これが転調なんだ!」と耳で体験してみましょう。
目次
STEP:1 まず「調(キー)」を知ろう!
転調とは、曲の途中で「調(キー)」が変わることです。
ですので、転調を理解する前に、まず「調(キー)」について知っておきましょう。
キーにはそれぞれ【主音】というものがあります。
例えば「ハ長調(Cメジャー)」なら「ド」が主音、「ヘ長調(Fメジャー)」なら「ファ」が主音です。
それぞれの曲には「ここが落ち着く」という音があります。
その落ち着く場所が主音になり、それが調によって場所が変わります。
ただし初心者のうちは、難しく考えず、キー=曲の中で「ここに帰ってくると落ち着く」という場所くらいに考えておけば大丈夫です。
キーを「家」に例えて考えてみましょう。
曲の中では、いろいろな音が行ったり来たりします。
でも最後に「ド」に戻ってくると、「帰ってきた!」というような安心感があります。
ハ長調なら「ド」が家。
ヘ長調なら「ファ」が家。
ト長調なら「ソ」が家。
この「家」がどこにあるのかを決めているのがキーです。
ハ長調とヘ長調の音階と主要三和音と呼ばれるその調でよく使われる和音を動画にしたので、ぜひ聞き比べて下さい。
STEP:2 転調とは?
キーが分かったところで、いよいよ「転調」について見ていきましょう。
転調とは、曲の途中でキーが変わることです。
例えば、曲の前半がハ長調(Cメジャー)だったのに、途中からヘ長調(Fメジャー)になった場合、
【ハ長調 → ヘ長調】
と転調したことになります。
先ほどの「家」のたとえを使えば、曲の途中で「家」が引っ越すようなものです。
最初は「ド」が家だったのに、途中から「ファ」が新しい家になる。
これが転調です。
「キーを変える」と「転調」は違う?
ここは初心者が混乱しやすいポイントです。
曲全体を最初から最後まで別のキーに変えることは「移調」と呼びます。
一方、曲の途中でキーが変わるのが「転調」です。
この違いについては、後ほど詳しく説明します。
STEP:3 転調すると曲はどう変わる?
では、曲の途中でキーが変わると、聴いている人にはどのように聞こえるのでしょうか?
転調には、さまざまな効果があります。
① 曲が盛り上がる
転調の代表的な効果が「盛り上がり」です。
特にポップスでは、曲の終盤や最後のサビでキーを変えることで、クライマックスを演出することがあります。
「同じサビなのに、最後だけさらに熱く感じる!」
という場合、転調が使われているかもしれません。
② 曲の雰囲気が変わる
転調は、単純に盛り上げるためだけのものではありません。
曲の途中でキーを変えることで、
●場面が変わったように感じる
●新しい展開が始まったように感じる
●明るさや切なさが強調される
●緊張感が生まれる
など、曲の表情を変えることができます。
③ 聴いている人に「変化」を感じさせる
転調すると、今までとは違う音の響きが生まれます。
そのため、聴いている人は、「あれ?今までと何か違う」と自然に感じます。
この「何か違う」を利用して、作曲家やアーティストは曲にドラマを作っているのです。
STEP:4 転調の仕組みを簡単なコード進行で理解しよう
ここでは、実際の音を聴きながら転調を体験してみましょう。
初心者でも分かりやすいように、童謡の「メリーさんの羊」を使います。
ハ長調からヘ長調へ転調してみます。
ハ長調では「ド」が主音です。
一回目の『可愛いなー♪』の部分からC → C7 → Fというコード進行を使って、ヘ長調へ移動してみます。
ここでポイントになるのが「C7」です。
C7はヘ長調の主要三和音の中の5番目の属音というものでヘ長調の主音である「F」へ進みたくなる性質を持つコードです。
そのため、C → C7 → Fと進めると、ハ長調からヘ長調へ自然につなげることができます。
「同じ曲なのに、途中から少し雰囲気が変わった」と感じられたら大成功です。
これが、キーが変わったことによる転調の感覚です。
STEP:5 よく使われる転調のパターン
転調にはさまざまな方法があります。
ここでは、初心者の方が耳にする機会の多い代表的なパターンを紹介します。
【半音上への転調】
ポップスで印象に残りやすいのが、半音上へ転調するパターンです。
特に最後のサビで使うと、曲が一段階上に進んだような高揚感を演出できます。
「最後のサビだけ、急に高くなった!」と感じる場合は、半音上への転調が使われている可能性があります。
ただし、音が高くなったからといって、必ず転調しているとは限りません。
メロディーの音域が上がっているだけの場合もあるため、キーそのものが変わっているかを確認する必要があります。
【近い調への転調】
ハ長調からヘ長調、ハ長調からト長調など関係の近い調へ移る方法もよく使われます。
今回のチューリップで紹介した"ハ長調 → ヘ長調"もその一例です。
近い調への転調は、急激な変化を作るというより、比較的自然に新しい調へ移動しやすいのが特徴です。ハ長調に対するヘ長調は「下属調」と呼ばれる関係にあり、近い調の一つです。
またハ長調→ト長調は「属調」とよばれます。
他にはハ長調→イ短調のようにシャープやフラットの数が同じ「平行調」というものや、ハ長調→ハ短調のように主音が同じ「同主調」も同じ近い調の分類になります。
これらをまとめて「近親調」と呼びます。
STEP:6 代表曲で聴いてみよう!転調が印象的な楽曲
ここまで読んだら、実際の楽曲で転調を探してみましょう。
転調を勉強するときは、「この曲は何調から何調に転調している?」と最初から分析するより、「どこで曲の雰囲気が変わった?」という視点で聴くのがおすすめです。
♪愛をこめて花束を | Superfly
♪Story | AI など
最後のサビの部分で全音転調しています。カラオケでキーを変えることもあるかと思いますが、それでいう+2個分です。
全音転調することで、エネルギーを引き上げ、パッと開けたような明るい印象を与えてくれます。
♪アゲハ蝶 | ポルノグラフィティ
→4分13秒あたり
♪地上の星 | 中島みゆき
→3分35秒あたり
半音転調しています。この2曲は短調の曲ですが、転調することによってさらに切なさやドラマティックな高揚感を与えてくれます。
♪パプリカ | 米津玄師
♪Love so sweet | 嵐
サビで転調しています。パプリカはサビ落としといって調を下げています。一気に盛り上げたいサビで落とすことで切なさやエモさの演出になります。
Love so sweet は半音上げの転調なので、逆に明るい前向きな印象を受けると思います。
転調を探すときは、次の3つを意識してみてください。
① サビの直前
雰囲気が切り替わる場所に注目。
② 最後のサビ
曲を盛り上げるために転調が使われていないかチェック。
③ 「なんか違う」と感じた場所
これが実は一番大切です。
理論を知らなくても、「何か変わった」と感じたところを探せばOKです。
STEP:7 転調と移調の違いとは?
転調とよく似た言葉に「移調」があります。
この2つは混同しやすいので、簡単に整理しておきましょう。
【転調】
曲の途中でキーが変わること。
例えば、Cメジャー → Fメジャーと曲の途中で変われば「転調」です。
【移調】
曲全体を別のキーに移すこと。
例えば、Cメジャーで作られた曲を、最初から最後までFメジャーで演奏するように変更した場合は「移調」です。
つまり、「転調=途中でキーが変わる」「移調=曲全体のキーを変える」と覚えておけば大丈夫です。
STEP:8 まとめ
転調を知ると、今まで何となく聴いていた曲の中に、たくさんの仕掛けがあることに気づけるようになります。
「ここで急に盛り上がった!」「この部分から雰囲気が変わった!」という瞬間を、「もしかして転調しているのかな?」と考えられるようになるからです。
最初からコードや楽譜を細かく分析する必要はありません。
まずは好きな曲を1曲選んで、「どこで音楽の景色が変わるのか」を探してみましょう。
転調前と転調後を自分の耳で聴き比べることで、音楽の変化をよりはっきり感じられるようになります。
転調は、難しい音楽理論を覚えるためだけのものではありません。
曲の雰囲気を変えたり、盛り上がりを作ったり、聴く人の感情を動かしたりするための大切な表現方法です。
次に好きな曲を聴くときは、「どこでキーが変わっているんだろう?」と少しだけ意識してみてください。
今までとは違った音楽の楽しみ方が見つかるかもしれません。
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