STEP:1 はじめに
バンドでの鍵盤は、1人で弾くピアノとは全く違ったスキルや練習法が必要になります。また、バンドと一言に言っても、その編成や楽曲、難易度などによって鍵盤のあり方は全く異なってくるでしょう。
バンドでの鍵盤というと、シンセサイザーや電子ピアノなどを使うことがほとんどです。ライブハウスやバンド編成、楽曲によっては、まれに生ピアノを使うこともあります。よくあるのは、上段にシンセサイザー、下段に電子ピアノの2段組みでの使用。人によっては2段以上組まれる方もいらっしゃいます。
ここでは、88鍵のシンセサイザーや電子ピアノ、生ピアノに絞って、必要なスキルと練習法をお話ししたいと思います。
STEP:2 「聴く」スキル
バンドにおいては、昔クラシックを習っていた人がバンドで鍵盤を始めるというパターンが多くあります。そういった方がまずぶつかる壁は、「リズム」! かく言う私もそうでした。
クラシックのピアノ曲は、基本的に1人完結の世界。感情を込めて弾くときに「溜め」を楽しんだり、自分なりのテンポで弾いたりなど自分のペースで進めます。それが、バンドだとリズムやテンポ通りに弾かなければならず、そこにまず戸惑ってしまうでしょう。
バンドでは、自分の音だけでなく、ドラムやベース、他の楽器を聴く作業が発生します。この「聴く」というスキルを身につけることで、リズムやテンポを守れるようになっていきます。
(練習法)
ドラムやベースのテンポに合わせて、指でトントンする。
とにかくたくさん曲を聴いてリズムを取ることに慣れる。
STEP:3 リズムに乗せて弾くスキル
もちろん、聴くだけじゃ弾けません。リズムに乗せて弾く練習が必要になります。自宅練習ではメトロノームは必須。
ピアノレッスンでは、正確に美しく弾くため、ゆっくりのテンポで弾く練習をします。弾けるようになるまではそれも大事な練習です。
だけど、ゆっくりでいくらきれいに弾けても、バンドでは合わせることができません。早い曲は早く弾けるよう練習する必要があるのです。
そのため、ある程度弾けるようになったら、演奏する曲のテンポで弾く練習をすることが大事です。どうしても難しい速弾きがある場合、クラシックと違ってバンドでは音を抜いたり違うフレーズにしたりしてアレンジしても構いません。(よほどこだわりがあれば別ですが……)
さらに言うと、電子ピアノでの演奏をシンセサイザーだけで練習するのは控えた方が良いでしょう。なぜなら、鍵盤の堅さが全然違うため、シンセで弾けたものが電子ピアノで弾けないということになります。
必ずスタジオ練習では、本番で使う機材に似たもの(本当は同じものが望ましい)で練習するようにしましょう。
(練習法)
メトロノームに合わせて弾く。
実際のテンポで練習する。
どうしても難しいときはアレンジする。
本番で電子ピアノなら練習も電子ピアノで。
STEP:4 コード譜を読むスキル
クラシック経験者がバンドを始めるときに、もう一つ戸惑うのは「え、楽譜ないの?」ということ。既存曲ならバンドスコアがあるものも多いでしょう。しかし、オリジナル曲やあまり知られていない曲、即興部分がある曲などは譜面がないものがほとんどです。
その代わりに、コード譜があったり、自分でコードを取ったりします。
コード自体は、インターネットでも簡単に調べられますし、今はコードを自動で作ってくれる便利なアプリもあります。それらをフル活用して最低限のコードの知識をまずは取り入れましょう。
(練習法)
コードの基礎知識について勉強する。
いろんな曲のコードを弾いてみる。
コード譜を作るアプリを取り入れてみる。
STEP:5 音域を決めるスキル
バンドでは、ギターやベース、ボーカルなど他のパートと一緒に演奏することになります。鍵盤はその中で最も広い音域を持つ楽器です。その際に、他のパートの音域とぶつかってしまう問題が発生します。そのため、赤◯で囲んだ辺りがおおむね鍵盤の音域となります。
低音域はベースとかぶり、中音域はギターとかぶります。高音域を鍵盤が担当することになりますが、それもボーカルの声域を理解していなければボーカルとかぶってしまうことも。また、ギターが高音域に行ったときに、鍵盤が中音域に移る臨機応変さも必要です。
バンドは、全てのパートがきちんと聴こえるのが正解。周りの音をよく聴き、音域を探って行くスキルが必要になります。
(練習法)
他のパートの音域を理解する。
他パートの演奏とかぶらない音域を見つける。
その音域内でアレンジする。
STEP:6 おわりに
昔クラシックをやっていた人がバンドで鍵盤を弾くようになるのは、よくあること。「クラシックはバンドで役に立つのか?」というと、イエスともノーとも言えます。
クラシックで身につけた「弾く技術」については間違いなく役に立つため、イエスと言えるでしょう。一方で、バンドでシンセサイザーを弾くとか、バンド用アレンジをするとかいった場合には、センスやシンセサイザーの知識が必要であり、楽譜通りに弾くクラシックはあまり役に立ちません。
技術と知識、センスに加え、バンドの個性を出す鍵盤においては、「音で個性を表現する」スキルも重要だと言えるでしょう。
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